日本を代表するプロサッカー選手として、また、柳屋本店の社会貢献活動(CSR)のアンバサダーとしてもご活躍いただく川島永嗣選手。現在フランスのRCストラスブールに所属し、2023年までの契約更新を発表するなど、38歳になった現在も目覚ましい活躍を見せています。2022年開催のW杯カタール大会に向けて、4大会連続出場が期待される川島選手に、ご自身の近況やサッカーのことなどお話をうかがいました。
日本でも、このところ環境問題への関心は高まっていますよね。フランスは特に社会の仕組みとして、いろいろなことが整っています。例えば、スーパーで袋をもらう人はほとんどいません。自分の袋を持っていくのが当たり前。飲み物のビンは、飲み終わったらスーパーに返します。するとお金が戻ってくる。お祭りなどでもプラスチックカップは使わず、デポジットを払いリユースできるコップを使うんです。これも使った後に返せばお金が戻ってきます。シンプルなことですが、そういう仕組みが普通のこととして整っています。僕自身は買い物では、なるべく自然に近いものを選ぶようにしています。
これからは物を選ぶ際の意識も、これまで以上に重要になると思います。まずは僕たちの意識。一つひとつは小さくても、その積み重ねが大きな改善につながるはずです。同時に企業の取り組みは、もっと大きな枠で社会を変えられると思うので、環境問題に取り組む企業が増えたらいいなと思いますね。そして僕らはそういう企業を選ぶ。
例えば、プラスチックを使わない企業姿勢に賛同して商品を選ぶ、支援したいから買うという意識。未来に生きる子どもたちのためにも、今意識を変えることが大人の責任ですし、一方で、世界の変化に対応していく力を、子どもたちに伝えることも大切だと思います。
子どもにより良い世界を残すための努力はもちろん必要ですが、それとは別軸の話として、世界の変化を止めることはできないと思うんですね。この10年を振り返ってみても、世の中は目まぐるしく変化しています。この先もっと速いスピードで変わっていくはず。その中で立ち向かえるように。残れるのは変化に適応できる人、強い人ではないと思うんです。
現在住まいがあるフランスで、日本との違いをいちばん感じるのが水です。フランスは硬水なのでカルキが多く、そのまま使うと髪が傷みやすいんです。ぎしぎしする。最初はシャンプーのせいかと思っていたのですが、調べると原因は水だと分かり、自宅のシャワーヘッドを浄水できるタイプに付け替えました。さらさらを実感できる髪型ではないですが(笑)、かなり改善されました。
日焼けしますね。頭皮ケアも気にはなりますが、フランスはあまりケア用品が充実していないんです。日本に帰ってきたときに美容室で頭皮マッサージを受けるのが楽しみ。髪も日本で切ってもらうとまるで違うんです、生き返るというか。といっても最近は自分で切っています。本格的なハサミやバリカンを買って、襟足の刈り上げも自分でやるんですよ。今日の髪型も自分で切りました。子どもの髪の毛も切りますし、近頃は周りからも「切って」と頼まれて、先日も長友選手の髪をカットしたんです。
僕にとってヘアセットは特別な意味があります。朝起きて、練習に向かうときは必ず髪の毛をセットします。基本はジェルです。きちんとセットしていないと気持ちが入らないんです。逆にリラックスするときはシャワーを浴びて完全にジェルを落とします。髪の毛をセットすることが、気持ちの切り替えにつながっています。
30代に入ってスキンケアを始めました。きっかけはシワに気づいたこと。以前撮影の現場で、モニターチェックをしていたら、かなり目立っていたんです。これはケアしないとまずいぞと。普段は顔を洗った後に、ローションとクリームを塗っています。
かなり違いますね。乾燥しやすいと思います。気候的なこともあるとは思いますが、冬の寒い時期はクリームをよく使います。顔もそうですが、ボディクリームも欠かせません。それでも乾燥するときはオイルを塗っています。
ウイルスが広がり始めた当初はまだ未知の状態でしたから、帰宅時のシャワーや着替えなどを徹底していました。チームからの要請もあって、家族と別の部屋で寝たり、家でもマスクをしたり。もちろん外出は練習のみですが、チームメイトと触れ合いますし、子どもが小さいので気をつけていました。ある程度対策が分かってからは、そこまで心配することはなくなりましたが。
フランスは完全なロックダウンで、約2ヶ月、外に出られなかったんです。僕は2019-2020のシーズン中はほとんど試合に出られず、リーグ戦も途中でストップしてしまった。このままシーズンが終わるのかなと最初は考えていました。でも、この期間は逆にチャンスだと、ここでコンディションを整えておけば、再開したときにチャンスが回ってくるかもしれないと気持ちを切り替えました。変えられないことに囚われストレスを溜めるより、置かれた状況の中で何ができるかを考えるほうが、時間やエネルギーの使い方として正しいと僕は思っていて。自分の行動や心は変えられる。好きな言葉があるんです。「おもしろきこともなき世をおもしろく」という高杉晋作の言葉です。物事をおもしろくするのは自分次第。昔からその言葉に勇気をもらっています。
もちろんあります。思い通りにプレーできないときや、勝ち負けは試合とは切っても切り離せないですし、上手くやれるときもあれば、そうじゃないこともある。長い目でみて「自分は何ができるのか」「次はこれができるようにしよう」と、気持ちを切り替えていくことが大事だと思っています。やるだけやって上手くいかなかったらしょうがない。これは違う道に行くための出来事だったと、今このタイミングじゃないんだと考えるようにしています。自分のキャリアの中でもいろいろなことが起きたので「上手くいかないときは何をやってもダメ」というのは身をもって感じています。
ポジティブでいようと意識する必要はないと思います。とにかく今日、与えられた1日を精一杯生きる。そうするとネガティブなことを考えている暇なんてないですよね。自分が強くあるためには、目標や夢はあったほうがいい。壁にぶつかったときに、乗り越える力になると思うから。目標や夢、希望を持つことで、それぞれの人生が輝くんじゃないかと思います。
僕は2018年からチームで試合に出られない時期が続いたんですが、2020年は24試合に出場することができました。でもその間自分のスタンスは同じ。自分が何をしたいか、どこを目指したいか、そのための行動もあまり変わってないんです。ただ、やっぱり試合に出られることは大きな財産ですし、自信につながっています。
若い頃は、40歳までヨーロッパでプレイしたいという思いはありましたけど、それだけが目標になったことはなくて。ただ、この年齢までフランスでサッカーができることは感謝しかありません。目標だけが大きくなってもダメだと思うんです。もちろん2022年開催のW杯に出場できたらそれは素晴らしいことですが、そのためにはまず、チームで結果を残さないといけない。W杯に向かっていく厳しさも知っているので、その資格に値するよう自分がやれることを精一杯。それが一番じゃないかな。サッカー人生最後の日まで、1日1日を満喫したいと思っています。