自分を信じることが唯一の希望。希望があるから、何度だって挑戦できる。

日本を代表するトップスケーターとして、国内のみならず世界へ挑戦を続ける菊池萌水選手。その姿勢に共感し、柳屋本店は2016年よりスポンサー契約を結び菊池選手をサポートしています。平昌を逃した悔しさをバネに、2021年1月、全日本ショートトラック選手権大会で4大会ぶりの総合優勝を果たしました。2022年開催の北京オリンピック出場に向け奮闘する菊池選手に、スケートのことや日頃のケアなどお話をうかがいました。

MOEMI KIKUCHI菊池 萌水
1992年4月6日生まれ。長野県出身。五人姉妹の四女。両親と四姉妹がスケート選手で、自身も8歳からショートトラックを始める。高校1年生の時に、世界ジュニア大会初出場で3000mリレー4位の快挙。翌2010年全日本ジュニアショートトラック選手権大会総合優勝。2014年ソチオリンピック日本代表に選出。2016年にJOC指定強化選手に選ばれ、同年ワールドカップ(オランダ大会)に出場し3000mリレーで銅メダルを獲得。2017年全日本総合チャンピオン。

トレーニングと研究の両立で、今がある。

まずは、3月のジャパントロフィー選手権大会での総合優勝おめでとうございます。1月の全日本ショートトラック選手権大会での500mおよび3000mの優勝から弾みをつけて、好調ですね。

ありがとうございます。これまで悔しい思いもたくさんしましたが、今シーズンの目標でもある「トップスピードをあげる」という課題もクリアでき、トレーニングの成果を実感しています。これは、大学院での研究成果も大きいです。競技と学問の両立は大変でしたが挑戦した甲斐がありました。

大学院は今年の春にご卒業されたそうですが、進学のきっかけを教えてください。

ソチが終わった直後に、骨盤と大腿骨をつなぐ中殿筋を故障してしまったんです。医者や作業療法士に聞いても解決法が分からず、だったら自分で勉強しようと。母校・早稲田大学の大学院へ進学し、スポーツ科学研究科に籍を置き自分の身体に向き合いました。「股関節ってなに?」ということから始めて、身体のメカニズムを研修し、トレーニングに活かそうと思ったんです。

トレーニングと研究の両立で今があるのですね。
コロナ禍で、競技に難しさを感じることはありますか?

海外遠征がなくなり挑戦する機会は減りましたが、かえってトレーニングに集中できました。移動中は練習ができないのでリズムが崩れがちになります。それに遠征期間は重なることが多く、例えばアメリカに1週間、その後カナダへ1週間、帰国して2週間後にヨーロッパへと結構ハードなんです。時差の影響や風土、ルールの違いなどストレスは多い。それが減ったことで、良いコンディションが保てたと思います。

海外遠征で感じた、日本との違い。

海外遠征の時に感じた、日本との違いがあれば教えてください。

競技ではないのですが、学部生時代にEU地域の研究をしていたんです。脱炭素社会に向けた取り組みなどヨーロッパは進んでいて。実際訪れてみると一般の方々の意識の高さを感じました。遠征には必ずエコバッグを持参しています。10年くらい前からでしょうか、現地でプラスチックバッグはほとんど使われていなかったと思います。

日本もエコバッグが定着してきましたが、
そんなに早い段階から浸透していたんですね。

オランダを訪れた際は、自転車が多いと感じました。街中に給水所があって、現地の方がマイボトルに水を入れる光景をよく見かけました。

日本でもSDGsという言葉を見聞きするようになりましたが、
実践していることはありますか?

都内に住んでいた時は、自転車での移動を心がけていました。今は、トレーニングでワットバイクを使っていますが、このパワーを発電に使えないかなと考えることはあります(笑)。選手みんなのバイクトレーニングが発電につながったらすごいんじゃないかと。

たしかに、すごいエネルギーになりそうですね。

練習中も気にならない、ボブスタイルがお気に入り。

普段の練習は、どのように取り組んでいらっしゃいますか?

現在、長野県と富山県の2カ所に拠点を置いています。午前、午後とも4時間ずつ練習があり、そのうち約2時間が氷上です。スケートは氷のスポーツですが、土台となる身体作りがとても大事。ストレングス・トレーニングといって筋力や持久力UPなど陸上でのトレーニングが欠かせません。

練習中のヘアスタイルは、どうされていますか?

最近はずっと、肩くらいのボブスタイルをキープしています。どちらかというとトレーニングの時に気になるので、束ねられるように。スケート時はヘルメットの中に髪を納めています。

ヘアードネーションから分かったこと。

過去にはロングヘアーだったこともありましたよね。

そうなんです。柳屋本店さんが取り組まれているヘアドネーションを知り私もやってみようと、2014年の平昌体制が終わった後バッサリ切りました。実際ドネーションをして気がついたのですが、ドネーションできる美容室は限られているんです。それに髪のストックはあっても、ウィッグを製作する資金や人手が足りないという事実を知って。柳屋本店さんのような企業が取り組んでくれることで、一人でも多くの方に支援が届けばいいなと思います。

髪にまつわる製品を手がける企業として、ヘアドネーションの支援は我々の責任だと考えています。これからも取り組んで参ります。
次はヘアケアについて、ヘルメット着用に伴い髪や地肌のトラブルはありますか?

トラブルは特にありませんが、午前、午後共に練習の後は必ず髪を洗って汗や汚れをリセットします。スタイリングは練習の日も朝から欠かさず、シャンプー後も毎回整えます。よく行くサロンの美容師さんに、うるツヤ髪の作り方を教えてもらい、最近はヘアセラムとオイルの合わせ使いが気に入っています。今はコロナの影響もあってなかなかサロンに行けないのですが、休みの日はヘアティンセルを着けたり、新しいスタイリングに挑戦したりと楽しんでいます。

アスリートとして、個の美しさを追求。

ファッションが好きとうかがいましたが、アスリートであることで両立が難しいと感じることはありますか?

目標に向かって没頭している時は正直、ファッションを楽しむ余裕はないのですが、気分転換にうまく取り入れています。ちょっとしたことですが、休日にオシャレをして家の掃除をしたり、近所のスーパーへ好きな服で出かけたり。一方で、アスリートとしての身体づくりは、洗練された身体や着飾らない美しさにつながるとも思っていて。何を着るかより、私自身のスタイルが大切だと最近感じています。

落ち込むのは、自分と向き合えている証拠。

コロナ禍でバランスをとることが難しくなっている方も多いと聞きます。
何かアドバイスはありますか?

気持ちの切り替えは正直そんなに上手くはないのですが、落ち込んだ時はまず具体的な原因を探ることが大事だと思います。それが分かれば周りにも相談できますし。でも本当にしんどかったらとりあえず休む。できる状態になるまで無理をしない。落ち込むって、自分と向き合えているからこそだと思うので、落ち込める人は勇気のある人だと思います。

たしかに、何も考えていなかったら落ち込まないかもしれませんね。

気持ちを切り替えるために、何か別のことをするのもお勧めです。私は甘いものが好きで、休日は脂質を落としたヘルシースイーツをよく作ります。例えば、バターの代わりにココナッツオイルを使ったクッキーや、和菓子も多いですね。先日はわらび餅を作りました。

脂質を控える以外に、気をつけていることはありますか?

水はよく飲みます。1日2リットルといいますが、きっとそれ以上です。トレーニングは筋肉にプレッシャーを与えること。つまり筋肉を損傷させているんですね。身体の6〜7割は水分ですが、もちろん筋肉にも含まれていて、トレーニングでの損傷を修復するためにも水は必要です。長野県のこの辺りは水が美味しく水道水も飲みますが、最近はもうひとつの活動拠点でもある富山県から海洋深層水を取り寄せています。富山湾の水はミネラルが豊富で質が良いと聞き飲み始めました。去年まで故障が多かったのですが、今年は調子が良く水は大事だなと改めて感じています。

自分に失望するのは、自分を信じているからこそ。

挫折や苦労を乗り越えて、ご自身や競技に向き合う現在の気持ち、
また今後の抱負について教えてください。

4年前にまさにこの場所で、平昌の選考を逃し悔しい思いをしました。何度も逃げ出そうとしましたが、負けたまま終わるのは嫌だと思ったんです。負けた理由も分からないまま終わってしまったら、将来どんな選択をしてもきっと納得できる人生にならないんじゃないかと。やれなかった事、やるべきことをしっかりやって、引退はその後でも良いと思ったんです。乗り越えたかどうかはこれからの結果次第。今後2022年の北京オリンピックに向けて、大事な試合が控えています。そこで結果を残す。スポーツ以外の分野でも、たくさんの人に支えてもらっています。私が目指すものを一緒に目指してくれる方々と共に、目標に向かって自分を信じていきたいです。

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