ウインドサーフィン・iQFOiLクラスの選手として、国内外で活躍する新嶋梨奈選手。JSAF(日本セーリング連盟オリンピック強化委員会)強化指定選手として、2024年パリオリンピック出場を目指しています。柳屋本店は2019年よりスポンサー契約し活動をサポート。慶應義塾大学に通う現役の女子大生として学業との両立に奮闘する新嶋選手に、ウインドサーフィンのこと、美容や今後の目標についてお話をうかがいました。
生まれも育ちも鎌倉で、幼い頃からずっとこの海で練習しています。物心ついたときにはすでにウインドサーフィンをしていました。
今私が取り組んでいるのはiQFOiL(アイキューフォイル)という艇種です。艇種というのは、簡単にいうとウインドサーフィンの道具です。風を受けるセイル部分とボード、それとボードの底面にフォイルという水中翼が付いています。これまで取り組んでいたRS:Xという艇種、多分みなさんがウインドサーフィンと聞いて真っ先に思い浮かべるものに比べてスピードが格段に出るようになりました。迫力もあるのでぜひ一度、レースを見てもらえたら嬉しいです。
自然に近い点でしょうか。風をどう読むか、その力をどう活かすか。自然の豊かさを実感できるスポーツですが、幼い頃からずっと海に触れてきてその変化も感じています。
SDGsの17の目標にも掲げられていますが、海の豊かさや気候変動についてリアルに感じています。例えば海洋汚染は、この鎌倉の海でも進んでいます。練習をしていると水中のフォイルにプラスチックバッグが度々引っかかります。最高時速は約48kmでますが、ごみのせいで突然ブレーキがかかるのです。走っているときは水中のフォイルが軸となり、海面から1mくらいの高さまでボードが上がりますが、そこから海に投げ出されるので鞭打ちになってしまうこともあります。
亀の死骸も多く見かけるようになりました。つい先日も近くの浜に鯨の死骸が上がりましたが、お腹の中にはプラスチックバッグがたくさんあったそうです。餌と間違えて食べてしまうのです。クラブに所属している方と一緒に、時々ビーチクリーンをしています。船を出せるときは、海の中のごみも拾います。小さなことですが、自分たちにできることを行動に移しています。
気候変動の影響で海面が上がり、さらに大型台風も増えているせいか砂浜が減っています。クラブハウスの目の前の砂浜もどんどん狭くなり、準備をする場所がなくて私たちも困っています。不定期で砂が運び込まれますが、台風がくるとまた持っていかれてしまうので、根本解決にはならないんです。
私にとって当たり前の環境だからこそ、守らなければという思いがあります。海には力があると感じます。例えば、メンタル的に疲れてしまった方が、ウインドサーフィンを通じ少しずつ元気を取り戻したケースもあります。単に「ウインドサーフィンは楽しい」と伝えるだけではなく、ゆくゆくは海のある生き方、心地よさを多くの人に伝えたいです。
海に出るときは髪の毛をお団子にまとめるか三つ編みにして、海水や潮風に触れる部分を少なくしています。海から上がったらお風呂に入り、できるだけ早く潮を落とします。
時間があるときは、お風呂に入りながらあんず油でヘアパックをしています。香りもいいので、バスタイムに使うとリラックスできます。
清潔感と髪の質には気をつけています。濡れた状態は髪によくないので、シャンプーの後は必ずドライヤーを使います。高温も髪の負担になるようなので、熱くなりすぎないドライヤーに最近買い替えたんです。ツヤのあるサラサラヘアを心がけています。レースで海外に行く機会も多いのですが、水のせいなのか髪がパサつくのが気になります。遠征にはあんず油を持っていき、普段よりも念入りにトリートメントしています。
もともと肌が弱く、一時期紫外線の影響で、ニキビや肌荒れが酷くなってしまって。それ以来徹底的にガードしています。まずは肌に負担の少ないSPF15の日焼け止めを塗り、次にSPF 50を重ね付け。その上にウォータープルーフのUVケアを使っています。さらにサングラスは必須。UVカットの黒いフェイスマスクも着けて練習しているので、誰だか分からないと知り合いに言われます(笑)。
当時は皮膚科に通うほど荒れていたのですが、ドクターズコスメを使うようになって落ち着きました。とにかく保湿を心がけ、髪の毛同様、潮はすぐに落とすようにしています。コロナ禍でおうち時間が増えたのでそのおかげもあるかもしれません。ネット情報やサロンの方から教えてもらったケアを楽しんでいます。
実は今、増量に取り組んでいます。iQFOilは大柄な体格が有利で適正体重は65〜70kg。重い方がスピードが出るんです。競技が第一なので太りたくないとは思いません。その代わり、肌や髪は綺麗にしよう、服装もきちんとしようと考えるようになりました。
食べ物の質ですね。生クリームをよく食べますが、添加物のない乳製品を自分でホイップしています。プロテインも摂っていますが、原料を確認して商品を選んでいます。母がよくプロテインクッキーを作ってくれるんです。健康的な食事に加え間食を増やし、さらにトレーニングで筋肉をつける。この繰り返しで約10kg増量に成功しました。
私の場合、コロナの影響はあまり感じなかったです。むしろ、これまで大学との両立に苦労しましたが、オンライン授業になったおかけでスケジュールの管理がしやすくなりました。片道1時間半の通学時間がなくなり、練習時間をしっかり取れるようになったのです。オンデマンドの授業も多かったので、練習しない夜を勉強時間に当てることができ、成績も上がりました。
夏はまだ良いのですが、冬の海は本当に寒いんです。風も弱く、いちばん吹くのは日の出直後。暗い中出艇するので寒さで足も痛く「練習したくない」と思うこともあります。特に私は、1人での自主練が本当に苦手なので、いつも誰かを誘うようにしています。練習に向かう環境を意識的につくります。コロナを機に、自宅ガレージにトレーニングジムを作りました。仲間を誘って一緒に筋トレしています。練習の後にごはんを食べることもあります。楽しむことも大切ですよね。
国内大会は常に優勝を目指し、国外の大会では上位50%に入ることが目標です。来年は重要なアジア大会が控えています。2月の国内大会がその予選を兼ねているので、出場枠を得られるよう確実に押さえたいです。私はパリオリンピック正式艇種のiQFOiLへ転向して1年半くらいですが、海外ではもっと早くから取り組んでいる選手が多いんです。しかも海外の選手のほうが体格も良く、フィジカル的にも有利です。一方で私たち日本人は細かく積み重ねていくことには長けているので、コツコツ練習を続け実績を重ねたい。来年からはいよいよプロ転向ですし、さらに競技に集中して上位を目指します。